渡辺みちたか(自民党・新宿区議会議員)official blog

新宿のミッチー。新宿区議会議員(自民党)。1985年12月生まれ。「渡辺ミッチー」こと渡辺美智雄・元副総理の孫。慶応義塾高等学校・慶応義塾大学・同大学院卒業。中小企業勤務、国会議員秘書を経て新宿区議会議員(2期)。会派は自民党区議団。

新宿区の「感染者に10万円支給する政策」の経緯を説明します

新宿区の「コロナに感染した方に10万円を支給する政策」についてご意見・ご批判をウェブや電話での問い合わせで頂戴しています。多くは「ホストやキャバクラ嬢に10万円の税金をやるのか?」、「感染したら10万プレゼントなんていうから、ホストやキャバ嬢が無敵状態で営業しているんじゃないか」、「10万もらうためにわざと感染するんじゃないか」というご意見です。

政策の経緯・真の狙い

この感染者に10万円を支給する政策ですが、タテマエ上は「コロナに感染すると経済活動に制約がかかるため支給する」という目的が掲げられています。一方で、もともと(歌舞伎町を擁する)新宿区独自の課題として、

  • ホストクラブやキャバクラなどで感染してるっぽい人がいるけど、そのまま放置で営業して(働いて)いる

という実態がありました。この状況は、実際の感染が表にでてこずに、潜ったまま拡大しうる非常に危険な状況です。そこで陽性者に対して10万円支給をすることで、政策の副産物として、潜っていた感染者や感染の温床をあぶりだす効果も期待されていました。この政策が議会にかけられたとき、私はむしろこの副産物こそが、政策の隠れた本当の狙いだろうと感じましたし、ほとんどの議員もそう思っていたと思います。

この政策は当初から、「自粛期間中に飲み歩いていたやつらにも支給するのか!?」といったご意見が根強くありました。自己責任論ですね。わかりやすく言えば、コロナにかかった人は対策が甘かったから感染した、生活がだらしなかったから感染した、という意見です。

そうした自己責任論も根強い中で、ご理解をいただきやすくするために「感染した場合、経済活動に支障がでるから」という目的を後付けで置いたのだと私は思っています。現実に、感染して働けなくなってしまった方や、医療従事者の方で大変な思いをしながら働き、感染された方もいらっしゃいます。ですので、私も住民の方からこの政策についてのご批判をいただいた際は、まず、「この政策の目的は感染した時に経済活動に支障がでるから~~」と大義を語ったうえで、「と同時に、いままでは潜ったまま感染拡大していた夜の街の感染をあぶりだす効果もあり、政策発表後、さっそく効果が出ています」と説明するようにしています。いまのところほぼ100%の方にご理解いただいています。

社会生活の中で、中身は同じなのに、表現やプレゼンテーションの仕方で、受注できたり、稟議がおりたり、はたまた、些細な事でも言いかた次第で夫婦喧嘩になったり、夫婦円満になったりします。こうした「ものは言いよう」は、政治の中にも当然あります。政府が豚インフルエンザと呼んだら豚肉の売り上げに影響がでたので、新型インフルエンザに言い直したり、ある法案について与党は「平和安全法制」と呼び、反対する野党は「戦争法案」と呼んだりして、同じ内容について違う表現をしたりもします。

もし、この政策も「ホストの感染をあぶりだすために新宿区が感染者に10万円を支給」という目的で発表していたのであれば、マスコミは批判的に(なぜそんなことに税金を投入するのかと)報道したと思います(そもそも議会を通過するかわかりません)。そうした批判の中では夜の街も積極的に検査に協力しないでしょう。そうなると政策の効力もでません。

今回に関しては、夜の街の隠れた感染が数字として表にでてきており、政策の狙い通りになっています*1。最近の傾向として、若い方や無症状の感染者が大きく増えていますが、もともと潜っていて数字に表れていなかった感染者が「見える化」ができたのもこの政策の効果であったと思います。「見える化」ができれば次の対策も打てます。こうした意味で、私は現段階で悪い政策ではないと評価しています。

(7/9追記)
新宿区に4/7時点で住民票があることが支給要件となるようです。区では現在800人超の感染者がでていますが、要件に当てはまるのは半分以下となりそうです。これにより、新宿区に住民票を移して10万円をもらうために感染する、といったモラルハザートを防ぐことができるかと思います。一方で、もし陽性という結果がでても「10万円がでるから」、と思っていた夜の街の検査の協力状況はひと段落するかもしれません。

*1:例えば、歌舞伎町と六本木の違いを考えれば、六本木もほぼ同様の感染者が出ていてもおかしくないのに、表に出てきていません。これって実態がわからず怖くないですか?