新宿区が民泊の規制強化を発表した。
・区内の住宅地の新設禁止し、2年間後には既存の施設も禁止
・商業地域は営業上限120日
・対面チェックインの義務化
など、来年6月までに条例改正・施行を目指し、改正されれば全国で最も厳しい規制となる。*1
以下、新宿で起こっていることと、規制強化に至った理由を書いていきたい。
◆住居を借りて民泊に?
新宿区は4000件近くもの民泊があり(全国の民泊の約1割にあたる)、ごみ出しや深夜に騒ぐ、客が民泊と間違えて民家に入ろうとする(誤訪問)などのクレームが区に年間1300件ほどよせられている。
観光やビジネスでの利便性のいい新宿区では、家やマンションを普通に賃貸に出し、賃料をとるよりも民泊にした方が2倍から3倍の売上があるそうで、民泊業者はマンションの部屋や一軒家を賃貸して民泊にしている。こうした賃貸物件での民泊経営が区内の民泊の76%に上っている。民泊事業者は「賃貸物件でビジネスをするのは普通のことでしょ」と言うが、住居を借りて、住むわけでもなく、転貸するのでもなく、観光客を泊める施設にするのは違和感がある。
マンションなどで民泊の運営がOKな賃貸物件は繁華街近くになくなり、住宅地のマンションの一室や一軒家の民泊化が増えており、旅客のマナーや管理の悪さが住民トラブルに繋がっている。
◆民泊大手の態度(追記あり)
日々、クレーム対応に追われている行政当局だが、新宿区の態度を硬化させている背景には、大手企業の態度の悪さがある(と私は感じている)。
新宿区に寄せられるクレームの相当数が、この某大手民泊の管理物件に集まっている。某大手は区が住民からのクレームを伝えても素直に動かず、むしろ言い返すこともあったようだ。
本来であれば、大手は物件の管理をしっかり行い、業界をリードしていくべきで、この某大手の態度の悪さとクレームの多さが、区に「民泊はやっぱダメだわ」と印象付けた可能性がある。
(2026年9月8日19時 追記:事業者の方から現在は専用の連絡窓口をつくり、保健所からの要望も対応している旨を連絡いただきましたので、追記いたします。)
条例改正までまだ少し時間があるので、業界はいち早くまとまって、自浄を働かせるべきだろう。
この点、ホストクラブの動きは早かった。売掛金(カケ払い)が社会問題になるや、複数あった有力グループがまとまって売掛金の禁止を決めた。その当時、グループ間に距離があり、「まとめることは不可能だ」と思われていたが、業界への逆風を前にちゃんとまとまった。新宿の民泊はこれに続くことができるだろうか。
◆無届民泊・闇民泊・違法民泊
民泊の問題を話すとき、無届民泊(=闇民泊・違法民泊)のことを避けては通れない。
民泊は市区町村に届出をして営業をする「届出制」の規制業種だ。届出には所有者や管理者の情報や、ごみを誰が収集するかなどを記載する。許可制ではないので、自治体に届出がなされれば営業することができる。
しかし、届出には1~2か月かかり、また届出をすると営業日数の制限(180日)がかかるので、手続きをせずに営業をしているケースがある。これが無届民泊だ。
私たち区議は地域密着なので、よく住民から「あそこに外国人がスーツケースをもって入っていったけど、民泊じゃない?」といった話をきく。そのたびに、届出事業者の一覧をみて、記載がなければ区に通報をする。
こうした無届民泊は管理の質以前に、違法で住民から気味悪がれており、民泊に対する住民感情の悪化につながっている。
問題は、無届民泊の取り締まりを警察がなかなかしてくれないことだ。
民泊の所管法は住宅宿泊事業法だが、都内で同法違反で検挙されたのは今年1月、荒川区の業者が初めてで、それ以降の話は聞かない(少なくとも新宿では)。
普通に考えれば、無届民泊を見つけた場合、違法なので即警察案件だろうと思う。しかし、実際の対応は、自治体の保健所が「民泊を経営しているのであれば、届出をしてください」と届出を促す優しい世界線になっている。
しかし、違法事業者も一筋縄ではいかない。「友達や親戚を泊めているだけ」、「お金はもらってない」と、民泊であることを認めないのだ。保健所が客に聞いても、そう言うように教えられているのか、なかなか尻尾をださない。
こうなると保健所は違法民泊が民泊であることの証拠を集めなければならず、負担がかかっている。これを警察ではなく、保健所がやっているのだ。
◆規制強化へ
住宅宿泊事業法では、住民の生活環境に大きな影響を起こす場合の民泊規制を認めており、今回の発表はそれを根拠にしている。
一方で事業者からは「規制強化は闇民泊を増やすだけ」との指摘もあり一理ある。ただ、これだけ社会問題になっている民泊の規制強化は避けられない。
もともと住宅宿泊事業法は、オリンピックを前にして違法で営業していた無許可の宿泊施設を、民泊に位置付けて行政でも把握できるようにするという狙いがあった。しかし、いまでは家が建ったら民泊だった、アパートが建ったら一棟まるまる民泊だった、マンションの隣の部屋が突然民泊になった、と規制のユルい旅館のような立ち位置でどんどん増えており、制度スタート時に想定していない事態になっている。
民泊も増えすぎて住宅地に進出してきており、住宅地ではクレームになりやすく、クレームの増加が保健所の負担を増やしている。区では保健所の民泊担当を増員しているが、保健所の規模に比べて民泊が多すぎる。そもそも保健所の業務は民泊だけではない。
今回の規制強化を区は「排除を目的としたものではない。住民の住環境を守るために管理をしっかりしてもらう」と狙いを説明しているが、本心は民泊を目の届くくらいの数に減らしたいのだと思う。
住宅地の民泊禁止を発表したが、現状当該エリアの民泊は2100件ほどあり、新宿の民泊4000件のうち半数以上が将来的に撤退を余儀なくされる。区長は「訴訟リスクもあるが、国と相談して、そうならないような条例をつくる」と宣言した。
自治体は住民の福祉の増進を目的としているので、住民にとってメリットのない民泊に厳しくなるのは当然だ。
最後に今回発表された民泊規制について記しておく。
・住居系用途地域は原則新設を禁止(2年間の経過措置後既存施設も禁止)
・商業系用途地域は年間120日のみ営業可(2年間の経過措置後既存施設も適用)
・対面でのチェックインを義務づける
・周辺住民を対象とした説明会の実施を義務化
(参考:同時に発表された旅館業の規制強化)
・小規模な施設の新設の禁止
・フロントの設置と従業員の常駐を義務づける
・対面でのチェックインを義務づける
・周辺住民への説明を義務づける
*1:※規制が遅い!とツッコまれるかもしれないが、新宿区は全国でも早く規制条例を作り、住居専用地域では週末のみの営業とするなど、最近までもっとも厳しい条例であった
