
「依命通達」の謎
新宿区では毎年9月一日(いっぴ)に、副区長から各部長に予算編成の依命通達が行われる。これを受けて各部では来年度の予算編成作業が始まる。依命通達は予算を編成にあたっての注意点が書き込まれており、また即座に公開されるので、この文書をみれば来年度の予算の特徴やら方向性がほんの少しだけ感じ取ることができる(最下部にリンクあり)。
ところで「依命通達」というのは不思議な言葉で、通達はようするに「指示」のことだが、依命がつくと「かわりに指示する」みたいなニュアンスになる。予算編成の指示は、普通に考えれば区長が各部長にすればいいのだが、なぜか副区長が区長に代わって各部に依命通達をするのが慣例になっている。新宿区では「依命通達」なるものは年2回行っており、この9月いっぴの予算編成に際してと、4月から予算執行が行われる直前、3月末に執行について行われている。東京都でも同じことが行われていて、地方自治体の慣例みたいなものなんだろう。
選択と集中がテーマの2025年度予算
さて、新宿区の予算編成の依命通達では毎年、「限られた財源で」、「予算編成に際しては無駄がないように」、「効果的・効率的にサービスができるように」ということがクドクド書かれているのだが、今年の依命通達をみてみると「選択と集中」、「安易な前例踏襲に陥ることなく」、「抜本的な見直し」といった、今までにない強い言葉を使って予算編成を指示している。
依命通達は、思いや方針を書いた前文と具体的な注意点を列挙した記書きの2つに分かれるが、記書き以下を見てみると、
- コロナ対策費についての記述を全カット
- ゼロカーボンシティ関連について、「環境に配慮した電力調達の推進」をカット
- 情報システム関連では「自治体システム標準化に併せて」という記述をカット
と昨年度の依命通達から3点の変更が行われている。コロナは5類移行でおちつき、環境配慮電力調達も一巡という感じで、なんとなくわかるが、自治体システム標準化は来年度末に移行しなければならないのに、なぜだか記載が落ちている。
ガバメントクラウド移行については新宿区は移行しなければならない一部のシステムについて、開発した会社がお手上げをしてしまい、期限内に移行できない「移行困難自治体」となったので、それと関係しているのだろうか。
レバレッジ強化事業という分類を新設
さて、昨年の依命通達と大きく文言が変わったのは「新規事業・拡充事業」についての記述だ。これまでも、事業の必要性を厳しく見極めよと書かれていたが、今年の通達はさらに一歩踏み込んで、「スクラップアンドビルドを徹底し、既存事業の見直しにより財源を捻出すること」とかなり厳しく書いている。つまり事業の拡充や新規事業は、既存事業費を減らして行え、ということだ。
この2年、歳入、歳出が急拡大しており、昨年度の決算は11年ぶりに実質単年度収支が赤字になった。つまり、区の貯金にあたる財政調整基金を取り崩しての財政運営が行われている。税収が過去最大になっている一方で、財政が赤字になっているのはこれまでないことで、もし景気悪化で税収減になった場合、あっという間に貯金を食いつぶして財政危機になる可能性がある。
区も、こうしたことを考えての予算編成方針で、そういえば、区長の今年の所信表明でも、財政について「警戒すべきタイミングに差し掛かっている」との発言があった。これまでの数年間、地域経済や生活支援や、子育て関連について潤沢な予算がついてきたが、来年度は新しく予算がバンバン付くというよりかは、見直し中心、となるかもしれない。
なお、例外の措置も残しており、依命通達では「レバレッジ強化事業」として認められた場合は、別枠で措置する旨が書かれている。新たな政策的(投資的)な予算については厳しく見るよ、ということだ。
我々政治家はアレにコレに予算をつけろと言いがちだが、こうした背景も考えつつ区に要望をしていきたい。
(参考)新宿区の来年度予算の依命通達