渡辺みちたか(自民党・新宿区議会議員)official blog

新宿のミッチー。新宿区議会議員(自民党)。1985年12月生まれ。「渡辺ミッチー」こと渡辺美智雄・元副総理の孫。慶応義塾高等学校・慶応義塾大学・同大学院卒業。中小企業勤務、国会議員秘書を経て新宿区議会議員(2期)。会派は自民党区議団。

選挙でどれくらいのおカネがかかるのか問題

 無所属で新宿区議に当選したナベヤスこと渡辺やすしさんの選挙戦略と支出の記事を興味深く拝読した。政策を知ってもらう/ビラを読んでもらうことへの特化が勝利の秘訣だったのだなと。私の場合と視点が全く違うので、ぜひこの違いをウェブに書きとどめておきたい。私の場合は、自分が住んでいる地区(落合東側地区)で「この地域の自民党候補」と知ってもらうための選挙戦で、そのための支出が主だった。なお、年明け以降の政治活動と選挙関連でかかったお金は、供託金、公費負担分を含めて400万円ほどだった(自民党でもかなり多いほうだと思います)。以下費用別に解説していく。

◆事務所関連 (約140万円)

 事務所は1か月借りて3週間ほどオープンした。内訳は家賃など(敷金含む)58万円、事務所に設置するデカい看板21万円、電話、複合機、ネット回線含む什器類レンタル27万円、事務所関連人件費35万円。このほかに事務所でつかう消耗品や事務用品、神事の初穂料など。

 選挙事務所はコスパが悪いと言われて久しい。家賃、看板、備品といった費用に加えて事務所を開くと、留守番がいなければならないし、(ぶっちゃけ)ヘンな人も来るから留守番も女性一人でというわけにもいかない。コスパを考えて国政政党に所属している候補者でも事務所を作らない人もいるくらいだ。

 一方で事務所のメリットとしては、デカい看板を置ける(地域の候補をPRできる)、ボランティアの集合・作業場所になる、推薦状、陣中見舞いの受付場所になる、がある。それぞれのメリットを書いていく。

①デカい看板を置ける(地域の候補をアピールできる)

 我々自民党の候補は、暗黙の了解でそれぞれ街頭活動をしていい範囲が決まっていて、今回は10人の自民党公認候補がいるから新宿区の10分の1の範囲でしか街頭活動をしない(できない)。私の場合、落合の東側地域は自民党候補として独占的に活動ができる代わりに、それ以外の地域での街頭活動は遠慮をしていた。それゆえ、「落合の東側地域の自民党候補は私です」と知ってもらうことが非常に重要で、落合東側地域の自民党支持者にこれが伝わらないと票はでないし、逆に十分に伝われば当選ラインに到達する。活動エリアの人通りの多いところに事務所を開設し、デカい看板をおいて、「この地域の自民党候補」をアピールすることは、同じ自民党のライバルが何人もいる区議選の場合、コスパという話以前だと思う。

②ボランティアスタッフの集合場所・作業場所

 政治活動や選挙は一人より多くの人数でやったほうがいい。事務作業として郵送物の封入、タックシール貼り、選挙はがきのあて名書き、カルタ取り*1などがあり、ほかにもポスティングを引き受けてくれたボランティアスタッフの集合場所、選挙期間中の集合・休憩場所、投票お願いの電話作戦会場として事務所は必要になる。私の場合、一人で活動しているとつい気が抜けてしまう(30分の休憩が1時間になったり、天気が悪くなると今日はもういいかとなってしまったり)ので、誰かに手伝ってもらうことで、自分の動きも活性化され、こういう効果も多分にあった。

③推薦状、陣中見舞いの受付場所

 ありがたいことに地元の有権者の方からの陣中見舞いをいただき、地域の商店街や歯科医師、医師、ビルメン、神社、社労士、郵便局、浴場などの団体からご推薦をいただいた。事務所は推薦状などをいただく場所にもなる。自宅で陣中見舞いや推薦状を受け取るシーンを想像できない。

選挙カー関連 約66万円(うち18万円公費負担)

 内訳は選挙カーのレンタル(一部公費負担)・看板設置で50万円、ドライバー(一部公費負担)、ウグイスで15万円*2。ガソリン代1万円は公費負担を使えるが、手続きと負担額を検討して自己負担とした。

 選挙カーはうるさいという評判や、1週間で50万円は高すぎると採用しない候補がいるが、私にとっては必須の選挙道具。選挙事務所の項目でも書いたが、とにかく「落合東側地区唯一の自民党候補」と知ってもらうことが大切で、私は選挙期間中の7日間、東側は目白駅、西側は中井御霊神社までの直線距離2キロの範囲しか遊説活動を行わない。この地域に住んでいる人にとって選挙期間中に最も接触回数の多い候補になる必要があるため、大きい音のでる選挙カーは効果的だ。

 新宿区議会議員選挙は1600票取れば当選で、区の人口34万人なら結構簡単なんじゃない? と思うかもしれないが、私(自民党候補)の場合は落合東側地区の有権者、約3万人で投票率40%、つまり投票母数が1万2000人のうち1600票とらないといけないのだ。結構大変でしょ。

◆政策パンフレット、リーフレット類の印刷、郵送、ポスティング、折込費用(約55万円)

 いわゆる「紙もの」。選挙期間のビラは公費負担でできるが、4000枚が上限なのであまり関係ない。紙ものは選挙期間前の政治活動の政策パンフレットが重要で、これはお金をかけようと思えば1番かけられるところ。新宿区内20万世帯に全軒ポスティングすると一回100万円超、主要5紙に折込広告をすると同じくらいかかる。これを2回ずつやればそれだけで400万円かかる。

 選挙は「現職優位」と言われるが、その一つがこの部分で、議会で質問をすれば年4回発行&新聞折込される「議会だより」に名前と発言が掲載され、議会会派でも活動や発言を書いた「区政報告」を発行・郵送でき、その費用を政務活動費で支出することができる。

 4年前、新人で選挙に出馬した時はこの費用に200万円超かけて行ったが、今回は新聞折込は落合東側地域のみ、ポスティングはボランティアスタッフにお願いしたので1/4ほどになった。

 選挙戦の最重要の課題である「落合東側地区の自民党議員」と知ってもらうためには、紙の配布はそんなに重要ではなく、街頭活動でも自分一人で立つときはビラやリーフレットは一切配らず、拡声器でひたすら自分の存在と、取り組みを訴えて、耳から「渡辺ミッチー」を覚えてもらうことに注力した。

 支援者から知人友人親戚をご紹介いただく重要アイテムの選挙ハガキ(5万円)印刷もこの項目。

◆二連ポスター/選挙ポスター (約80万円)

 内訳は2連ポスター17万円、選挙ポスター52万円(公費負担)、ポスター貼付11万円。山田みきさんとの2連ポスターは、党新宿総支部が作成してくれたが、A2サイズで小さかったのでA1サイズを兄の渡辺みちたろうと祖父の渡辺美智雄との3連(?)で作った。このポスターは結構な反応があり、知名度向上に効果があった。なお選挙でつかう公営掲示板に貼る選挙ポスター(379枚)は全額公費負担。

◆その他

・選挙広告(5万5千円) 新宿新聞の広告費。
SNS/WEB関連(30万円) これはまた今度、考察記事を書きたい。
・選挙供託金(30万円) 返還される予定

◆選挙戦・まとめ

 自民党の区議選は、自分の活動しているエリアの自民党支持者に投票してもらうことが基本で、個人的なつながりや、友人知人のご紹介がプラスアルファ(新宿全地域の)票になる。ナベヤスさんは「政策を知ってもらう=読んでもらう」パンフレットを意識したようだが、私のパンフレットは精読してもらうものではなく、パッと見、ナナメ読みでOKで、配布した地域で「自民党の渡辺みちたか」を覚えてもらうものだった。政策では自民党11人の候補で違いはあまりないし、なんなら地方選挙で訴える地域固有の課題になると、自民も公明も共産も違いはそんなにない。(政策や思いを聞きたい方には区政報告会を行い、地元代議士、都議、区長はあいさつ3分で私は30分(!)も大演説させて貰った)

 また今回は空中戦では紙のリーフレットよりも音を重視していて、選挙前の政治活動から、「自民党の渡辺ミッチー」を耳で覚えてもらうことを意識していた。我々の業界に「選挙の前に選挙は終わっている」という格言があるが、それは半分本当だけど、半分はウソで、選挙カーが入ってからがむしろ空中戦の本番で、一週間のうち落合東部の1.5km×2kmの遊説活動の範囲で何度も同じところで街頭演説し、「この地域の自民党公認の渡辺みちたか」でふわっとした自民党支持層の票を取り込んでいった。

 今回はこの作戦が当たって(?)2505票をいただき当選することができたけど、4年後は通用するかわからないし、体力的にも衰えているだろうからバージョンアップしていかねばらない。4年後に向けてまた戦略を練りつつ、もっとも大切な本業を全うしていきたい。

*1:支援者に書いてもらった選挙はがきの宛先のダブりをチェックする作業

*2:選挙カー関連の費用はツテや手伝ってくれる人のいる陣営は総額15万円くらいでやっているとも聞く