渡辺みちたか(自民党・新宿区議会議員)official blog

新宿のミッチー。新宿区議会議員(自民党)。1985年12月生まれ。「渡辺ミッチー」こと渡辺美智雄・元副総理の孫。慶応義塾高等学校・慶応義塾大学・同大学院卒業。中小企業勤務、国会議員秘書を経て新宿区議会議員(2期)。会派は自民党区議団。

【新宿区】教育・子ども関連予算の大増額(2024年度予算その2)

子ども関係の事業拡充や予算が目立つ

 新宿区の来年度(2024年度)予算案の特徴は子ども関連、教育関連に大きく予算がついていることだ。区長も予算委員会質疑の冒頭で今年度予算について、子ども関連政策に力を入れたとし、具体例として子ども団体の区スポーツ施設利用料の減額と、生活困窮世帯への学習支援の2つの新事業を挙げていた。

 区の子ども関連予算増は、岸田政権による異次元の少子化対策の反映ともいえる。金額面では、保育園や学童クラブなどを含む子ども家庭費が昨年度比26億円増の350億円、区立小中学校関連を含む教育費は58億円増の212億円と大きく増額された。5,6年前は子ども家庭費は300億円、教育費は100億円の水準だったので近年予算が急激に伸びている。
 来年度は保育所建設助成4.6億円、弁天町保育園建設5億円増、牛込第一中学校建設関連35億円などの施設の建設関連予算が金額の上では大きいが、サービスについても給食費無償化(12.3億円)、私立幼稚園実質無償化(1.7億円)、電子図書館導入(2.4億円)、学童クラブ定員拡充(18億円)、ベビーシッター利用補助(1.2億円)、子ども医療費(16億円)*1などが拡充や増額されている。

転換期に差し掛かる子ども政策

 大きく伸びている子ども関連の政策だが、難しい時期も迎えている。新宿の特性として、再開発で住戸が増えたり、大きなタワマンがたつと地域の小学校や保育園がパンパンになる(例えば四谷と西新宿)。こうした地域では今後も投資が必要になる一方で、コロナ禍以降、急激な出生数の低下が新宿でも起こっており、区内の保育園、幼稚園の定員割れが起こっている。直近の10年は保育園整備を急いできて、先年ようやく待機児童ゼロを達成した。保育園待機児童ゼロの次は学童クラブに重点を置いているが、あと10年もたつと急速にだぶつく可能性がある。

 保育園は、これまで国策として増やしてきた。これは本来の目的のためである子どもの福祉や、少子化対策のためというより、人手不足解消のための産業政策、つまり出産・育児による女性の退職を防ぐために保育園の緊急整備を行ってきた。いまでは出産や育児のため退職するということを東京ではほとんど聞かなくなり、産業政策としての保育園整備は成功したといっていいだろう。ところが、「早朝から夕方まで子どもを預けられる」保育園に重点を置いたため、小学校入学前の教育機関である幼稚園や幼児教室などが瀕死の状態に陥っている。これは子どもを保育園に取られてしまうことはもちろんのこと、保育士は月給改善や家賃にまで公的支援があるため待遇がよくなっており、競合する*2幼稚園が教員採用にとても苦戦している。今後、保育園で教育を手厚くする方針がでた場合は幼稚園や幼児教室は終わってしまうだろう。

子どもを育てる責任はだれが持っているのか

 議会の議論を聞いていると、教育や子育てについて学校や行政への要求が大きくなっているように感じる。首都圏では、フルタイムで働く両親(あるいは片親)のみで子育てをするのが当たり前になってきた。平日夕方まで子どもの面倒をみるのは行政で、宿題のケアも行政で、夏休み中も行政で、不登校になっても別の手段を行政で……。 ある程度は仕方がないが、教育についても要求が高くなる。先日、ご子弟が通う区立小学校での英語教育についてのご意見を長々いただいたが、あまりの要求の高さに思わず、「塾に通うか、私立に通わせたらいかがですか」とお答えした。公立の学校の教育は学習指導要領の内容をクリアすればよく、それ以上を求めるのであれば私立に通わせればいい。ちなみに区立学校では校長の権限がとても強く、議員や教育委員会が言っても指導の中身は変わらないことがほとんどだ。また、校長が変わると方針転換をすることもある。区内の某小学校では突然校長が「目覚めてしまった」らしく、長期休みでの宿題なし、定期テストなしを打ち出して困惑の声を聞いたこともある。公立学校はいい意味でも悪い意味でも、(私立と違って)強い教育理念はない。

 子どもの教育すべてを学校で教え、子育てすべてを行政が行うのは不可能だ。子育ての最終的な責任は家庭にある。かつては女性が子育てや家事などの家政を担ってきたが、国策として女性の社会進出を推し進めてきた。当然、家庭で手が足りなくなる部分が生じてくる。こうしたことで行政にできることは行政に、だが家庭の責任はなくなったわけではない。学校や行政への要求が大きくなっている今だからこそ、切り分けを意識して区政に臨みたい。

*1:カッコ内はいずれも予算額

*2:保育士と幼稚園の教諭は資格は異なる

【新宿区】来年度予算はきめ細やか・積極財政・大盤振る舞い予算だ(2024年度予算その1)

 区長による所信表明があり、来年度予算も議会に提出されたのでレビューしていく。まずは全体について。

 来年度(2024年度)の一般会計予算案は歳出1845億円と過去最大で、多くの事業が拡充され、これ以上ないくらいの大盤振る舞い、もとい、区民のニーズに細かく対応したものに仕上がっている。一方で気がかりなのは予算規模が巨大になっていることで、税収が絶好調にも関わらず財源不足が100億円にも上り、足りない分は区の貯金から切り崩す。区の貯金は311億円なので、およそ三分の一だ。100億円の財源不足はリーマンショック直後の2010年度当初予算の109億円に次ぐ水準で、リーマンショック時は税収がギュッと縮まって財源不足に陥ったが、いまは状況が全く異なる。この辺りの認識は定例会と予算委員会で聞いていきたいと思う。

 また、来年度は西新宿小学校、牛込一中の建設・用地買収、新宿文化センター改修工事などの建設費も重く、84億円の区債の発行を行う。区は施設の建設用の貯金(社会資本等整備)もしており、この貯金が10年前は26億円(2014年度)だったが、今や147億円あるのでいくらか余裕はある。が、バブル期に計画された多くの施設が30年経ち、これから改修の時期を迎えるので予断は許されない。

 共産党は「区の貯金がべらぼうに溜まっている! 吐き出せ!」というが、たとえ貯金が300億円あったとしても、もはや1年で貯金の三分の一を吹き飛ばしてしまう財政規模なのだ。今日発表された区長の所信表明(区政の基本方針説明)では長期的な財政運営について「(対応力を確保し続ける上で)警戒すべきタイミングに差し掛かっている」との発言があった。経済状態が悪くなると急激に財政が悪化する可能性があり、区当局においては是非その認識をもちつつ、緊急度の高いものについては機動的に対応するメリハリをもって今後も区政に臨んでほしい。

◆来年度予算案で主だったもの・目立つ事業
・学校給食無償化(新規) 12.2億円
・プレミアム付き商品券(継続) 12億円
・ベビーシッター助成(拡充)1.2億円
GIGAスクール タブレット端末更新 8.7億円
・学童クラブ(拡充) 18億円
・私立幼稚園の実質無償化 1.7億円
・西新宿小校舎増築 10億円
・牛込一中の用地買収 31億円
・経営力強化支援事業(拡充) 10億円
新宿中央公園の整備 1億円

区民の税金を使って、やすやすと外国人留学生にお小遣いをあげるべきではない

 2月1日の臨時会で低所者への3~10万円の給付金を審議する。約30億円かけて行う大きな事業だ。この話は論点がさまざまあるが、わかりやすい課題点は、(住民税非課税であれば)外国人留学生も支給対象となっていることだ。

 新宿区は外国人が多く、35万の人口のうち約1割が外国人で、そのうち25%ほどが留学生といわれている。単純計算すると8750人が留学生になる。こうした留学生は日本に来て勉強し、数年で本国に帰る方がほとんどで、数年で本国に帰る人たちに区民の税金を使って給付金を支給するべきなのだろうか。私はそれは筋違いだと思っている。そもそも、この給付金は物価高騰対策の事業であり、日本に来たばかりの外国人は日本での物価高騰の影響を受けていない。

 また、もうひとつ問題がある。わが国の制度上、1月1日が住民税の課税基準日であり、1月1日以降に来日した外国人は、初年度は住民税非課税世帯として扱われる。非課税世帯ということで、給付金も支給される。今回の給付金は12月1日の住民情報をもとに給付するので、極端な話だが11月30日に来日した外国人でも給付が行われる。これは、留学生に限らず、(租税条約締結国の対象者を除いた)労働者でも同様に給付金の支給対象となる。つまり留学生に限らず、稼ぎのある外国人でも、

  1. 租税条約の要件を満たさず、
  2. 来日の初年度であれば、

 支給の対象者になることを意味している。所得が低く、物価高騰により生活が圧迫されている人のための給付金事業であることを考えれば、これはさすがに不平等だろう。

 区の給付金の事業の設計は国の実施要綱に従っておこなっている。国ベースで考えれば外国人の留学生(や労働者)などは考えなくてもいいほどの微々たるものだろうが、新宿区で考えれば、人数や、金額は結構なボリュームになる。今回の住民税非課税世帯への3万円の支給は国費ではなく、区が独自で行う政策であり、区民の税金が原資なのだから、この辺りの設計も国と相談しつつ、しっかり行ってほしい。

嵐の中でも時は過ぎゆく(2024年頭所感)

 年が明けた。昨年2023年は自民党にとって逆風の年だった。年末はテレビをつければ(スマホをみれば)派閥のパーティー券の話がえんえんと報道されていた。夜警や忘年会では「大変だねえ」とか「お前もキックバックもらってるのか!?」とご心配や、イジり、ご批判、毒はきなど、さまざまいただいた。すべて真摯に受け止めたい。

 いろいろなご意見をいただいて、思い出していたのはちょうど10年前、2014年2月に私の伯父の渡辺喜美 衆議院議員みんなの党代表が化粧品会社の会長から8億円のカネを借りて、それを政治資金収支報告書に記載していなかったというスキャンダル報道のときの事だ。当時私は喜美さんの秘書、というかカバン持ちをしていて、朝から晩までほぼすべての行動を共にしていた。その時の世間のバッシングっぷりはこんなもんではなく、国民の9割が納得していない状況だった。兄と義姉が議員として地元(栃木県)を守っていたが「渡辺という名前がつくだけで犯罪者扱いだった」と後に聞いた。本当にそうだっただろう。

 

 問題発覚からいくらか経つと、喜美さんも報道とその対応に疲れ果ててしまってグッタリしていた。

 そんななか、ある日、喜美さんが事務所に大きな色紙を持ってきた。批判報道が続いて気落ちしているだろう喜美さんを励ますために、ある支援者が揮毫した色紙だった。その色紙には「嵐の中でも時は過ぎゆく」と書いてあった。シェイクスピアの『マクベス』の一文だ。

 喜美さんは事務所の自分の部屋の一番みえるところにこの色紙を飾った。そして「見てくれる人はいる。だから、できる仕事に励もう」といった。

 10年たってこの頃のことを思い出す。私は地域から選出されている地方議員になった。どんな嵐が吹いたとしても、自分の本業をしっかりやろう。皆さんの声を聞き、それを区政に届けていきたい。

 本年もどうぞよろしくお願いします。

書評『明日、私は誰かのカノジョ』4章(5~9巻):ホストにハマる根本と行政に何ができるかを考える

 しばらく前にTwitterで話題になっていた漫画、「アスカノ」こと、『明日、私は誰かのカノジョ』の5巻~9巻を読んだ。この巻(4章Knockin'on Heavens Door)は、女子大生の萌がぴえん系女子のゆあとの出会いをきっかけにホストにハマっていく様を描いている。このエントリーではこの漫画を通じて、ホストにハマる根本原因と、解決策を考えていきたい。

www.amazon.co.jp

ネタバレ含むあらすじ

 女子大生の萌は歌舞伎町のぴえん系女子のゆあと知り合ってホストクラブに行く。そこでホストの楓(かえで)と出会い、巧みな営業とタイミング、そして接客態度によって恋愛感情を抱く。萌はホストクラブに通うようになるも、高まる感情と反比例するようにお金が無くなっていき、風俗で働きだす。やがて友達とのつながりも希薄になり、大学もやめ、ホスト沼の深みにはまっていく。楓のバースデーのため130万円の軍資金を作るも、楓の誤爆LINEと馴染みだった新宿2丁目のバー・TRAPの店長からの連絡がきっかけとなってホスト通いをやめて、実家を頼りつつ社会復帰を目指す。

客とホストの関係:恋愛感情だけではない

 アスカノが描いている、客がホストに抱く恋愛感情とそれ以外の気持ちや、客同士の煽り合い、SNSやホスラブ掲示板での暗闘はリアリティがある。この物語は萌がホスト沼から抜け出せてよかったね、というハッピーエンドの裏で、ホスト遊びをし続けるぴえん系女子のゆあがいる。むしろ、この話の本当の主人公はゆあで、彼女こそ、ど真ん中のホス狂でホスト遊びの神髄を味わっており、歌舞伎町で問題となっている諸問題を背負っている。ゆあは毒親から歌舞伎町に一人で逃げてきて、強いメンタルと弱いメンタルを併せ持ち(ようは不安定だ)、腕にはリスカ跡が無数にあり、いやなことがあればオーバードーズに走るデリヘル嬢だ。そんなゆあが担当ホストのハルヒに抱く感情は複雑だ。恋愛感情があり、独占したいが独占できないもどかしさ、ムカつく感情、売り上げを支えたい思い、そしてなにより捨てられたくない思いが混ざり合っている。この点が、恋愛感情のみでホストと繋がっていた萌とは全く違う。

萌とゆあの世界の違い

 社会復帰に成功する萌と、ハルヒと切れてもホスト遊びから抜け出せないゆあの違いは、居場所の有無だ。萌は、理解ある親がいて、友達がいて、馴染みのバーのTRAPがある。それら全員に支えられて社会復帰する。すなわち、ホスト以外にも居場所があるということだ。一方のゆあは帰る実家はなく、友達もおらず、あるのはホストだけだ。お金さえ払えば、優しくしてくれて、心地よい環境を作ってくれるホストは欺瞞の関係だとゆあもわかっているが、ほかに居場所はない。萌がホストにハマる過程で友達やTRAPから遠ざかっていく描写も、ホストが唯一の人間関係にして、唯一の居場所になっていくことを意味している。ホストにお金はかかるが、逆に言えば、お金さえあればよく、ゆあはホストをやめることもできないし、お金が必要だから、体を売ることもやめることができない。

 男の通うクラブやキャバクラと比較されがちなホスクラだが、明確に違うのはその関係性で、物語中、ホストが客に「今日はどんくらいいける?」と聞いたり、翌週に地方風俗に出稼ぎにいくゆあに「来週は頑張ろうな」というハルヒや、客が「私はハルヒを支えることしかからできないから、今月も頑張るね」というお金をあからさまに前に出すコミュニケーションは男の通う店ではない。

『明日、私は誰かのカノジョ』6巻P20

キャバクラやクラブも恋愛感情や、居心地の良さを求めて通うものだが、ホスクラはそれに加えて、ホストと客で協力してホストのランキングを上げる、客がホストの売り上げに貢献するという、共に目標に向かって進んでいく充実感・達成感も提供している。この辺りはAKBの押し活、CDを買いまくってアイドルとファンとで一緒にランキングを上げていくという感覚に近い。CD1000枚買うオタクがエライのと同じように、高い酒を入れて売上に貢献する客がエライのだ。歌舞伎町周辺を走るアドトラックにはホストの肩書として「月間売り上げ1000万」や、「一億円プレーヤー」とデカデカと書いていて、既存客からすれば、あいつは私が育てた、という思いがあり、また人気が人気を呼ぶ商売だともいえる。

では行政が居場所を提供できるか。いや、できない。

 ホストクラブが問題化されているが、はたして行政がどこまでかかわれるのだろうか。SNS上で問題になっているのはホストの売掛商法が問題で~というところだが、アスカノを読んでもわかるように、この話の根本は居場所の話だ。どこにも居場所のない女性と、お金を払えば心地よい人間関係と、居場所を提供してくれるホストクラブの需給が合致している。ただし、ホストクラブにハマりすぎると女性にとって経済面で持続可能ではなくなり、やがては身を滅ぼすことが話題(問題)になっている。では行政がホストクラブに代わる、居場所を提供できるだろうか。それはやっぱりできないだろう。

 行政が税金をもって提供できる居場所とは、衣食住の提供をするが、そのかわり規律を求める居場所だ。でも彼女たちが求めているのはそういう厳しい居場所ではない。規律を緩くすればいいのかもしれないが、「元ホス狂の人(あるいは予備軍の人)に衣食住を提供して、かつ好き放題すごせる場所*1」は今度は納税者の理解が得られない*2。そうなるともはや行政的には手詰まりだ。(行政ができることは過去のエントリー参照のこと)

訴求力のあるストーリーとNPO

 行政の隘路というべき部分だが、解決への糸口もある。この問題はNPOの本来業務なのだ。この話は訴求力のあるストーリーがある。典型的なのはゆあの背景で、片親、毒親で、ヤングケアラーで、ネグレクトを受けて家庭に居場所がない、地元の友達にも煙たがられる、仕方なく繁華街にでてきている。そういう人たちを支援しましょう、というストーリーは訴求力がある。賛同者からお金を集めて、行政ではできない彼女寄りの一歩踏み込んだ支援をすればいい。来年4月から「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律*3」が施行され、NPOへの期待が条文にも込められており、行政からの支援も手厚くなる。これまでのような補助金や、場所の提供などに加えて、行政は資金調達のバックアップも行うべきだ。
 行政であれば、売春をしていれば摘発しなければならない。オーバードーズも違法薬物を持っていたら逮捕しなければならない。未成年なら補導(そして家庭に連絡)しなければならない。そういう部分でも行政の支援は柔軟さが欠け、NPOの方が寄り添った対応ができる。若い女性の支援団体については昨年SNSを中心に炎上騒動があったが、新宿ではまっとうなNPO・支援団体が活躍できる環境づくりをしていきたい。

 

(関連記事)ホストクラブ売掛規制に関する整理

watanabemichitaka.hatenablog.com

*1:あえて極端な表現を使った

*2:そもそも、ホストに通い詰めて身を崩した女性への自己責任論もある

*3:女性新法・女性支援法・困難女性支援法などと呼ばれる