渡辺みちたか(自民党・新宿区議会議員)official blog

新宿のミッチー。新宿区議会議員(自民党)。1985年12月生まれ。「渡辺ミッチー」こと渡辺美智雄・元副総理の孫。慶応義塾高等学校・慶応義塾大学・同大学院卒業。中小企業勤務、国会議員秘書を経て新宿区議会議員(2期)。会派は自民党区議団。

視察:明石市 あかし健康プラン21・あかし健康ソムリエ会、神戸市 認知症神戸モデル(診断助成・事故救済制度)

 福祉健康委員会の視察で明石市と神戸市を訪問した。明石市では健康計画のあかし健康プラン21と、健康ボランティア団体のあかし健康ソムリエ会の取組を、神戸市では認知症の診断助成事業と事故時の救済制度の話を伺った。

明石市 あかし健康プラン21・あかし健康ソムリエ会

 明石市に健康プラン21があるのと同様に、新宿区にも新宿区健康づくり行動計画がある。ちょうど今年は新たな計画の策定の年で、現在策定の最終段階のパブコメを受け付けている。両健康計画をじっくり見比べて臨んだが、結構地域差があるものだと思った。もっとも大きな違いは目標の指標が明石市の方が目標に直結する指標に定めているところだ。新宿の指標はすこし遠い。例えば、健康のために野菜を食べましょうという目標が新宿にも明石にもあるが、明石の指標は「一日に350gの野菜を食べた人の割合」なのに対して、新宿は「一日に必要な野菜の摂取量の認知度」と、実際に食べた人ではなくて、食べる量を知っている人が設定されている。高齢者の歯の話でも、明石は「80歳で20本の歯がある人」に対し新宿は「かかりつけ歯科医のいる人」とこんな感じだ。ほかにも新宿では、リーフレットの配布枚数、関連する健康団体の数、セミナーや会の実施回数などが指標になっており、もっと目標に近い指標を設けることも可能だと感じた。視察でもしない限り他自治体の健康計画をここまでじっくり読み込まないので、いい機会だった。一方で、明石のように目標に直結する指標はいいが、指標の進捗を毎年得るのが難しく、明石市では数年に一度アンケートを取って進捗情報を得ているということで、目標数値に向かって細かな修正が効きづらいデメリットもある。

 また地域差という事で驚いたのがアルコールの話で、「生活習慣病リスクを高める飲酒をしている人の割合」が新宿区では男性15.6%、女性17.6%に対して、明石市では男性16.8%で、女性がなんと2.1%と信じがたい数字差になっている。明石の女性はお酒飲まないのか、あるいはお酒を飲むことを他言できないのか、はたまたデータの基準値が違うのか。

 視察のもう一点のボランティア団体のあかし健康ソムリエ会の取組。健康づくりの活動を、(新宿も含め)多くの自治体では行政が直接、住民への啓発や健康イベントを実施しているが、明石市では同会がボランティア的に健康活動、住民への啓発活動を行っており、大変おもしろい取組だった。新宿でもできればいいが、こういう話になると必ず「いち特定団体だけ補助を付けたり、交通費を支給するのは~~」という議論が起こるので、理解や文化の差だろうか。

 明石市側から丁寧な説明が続いて質疑応答の時間がなかったので質問点・疑問点はメールで行うことになった。質疑応答がないと消化不良感がある。また質疑応答も、文書で行うと先方の手間が段違いにかかると思うので、事務方は段取りをしっかりやってほしい。

◆神戸市 認知症神戸モデル(診断助成制度・事故救済制度)

 神戸市では、65歳以上を対象に認知症の診断を助成(1段階目は無料、2段階目の精密検査は補助)し、認知症と診断された方には賠償保険料等を市が負担し、さらに認知症の人が起こした事故に関して、被害者に給付金を支払う事故救済制度を実施している。その2つの制度の財源として市民税均等割りを1人あたり400円徴収している。さすが政令市というか、本来国がやるべきことを基礎自治体がやっている事業で、政令市のプライドを感じる。

 認知症の事故救済は重要な問題だ。例えば、認知症の人が他人を傷つけた、または物を壊したとする。このときに認知症の人に責任なしとされれば、被害者はやられ損になる。逆に認知症の人に責任があるとなった場合は、賠償となって、認知症の家族に経済的な負担がかかる*1。こうした時に、賠償保険に入っていれば、責任があった場合は、保険給付で賄われる。神戸市ではこの賠償保険の保険料を助成し、事故時の責任がなかった場合でも、被害者に見舞金を支払うことで救済を行っている。新宿区でも高齢化が進んでおり、認知症も今後増えていくことが見込まれているのでとても参考になった。ただ、基礎自治体というより国の政策だろうと思う。現に神戸市も毎年政府に要望しているとのことだ。

 公費による議員の視察は常に批判があるが、そもそもの目的である住民の代表者が他自治体の取組を知って見聞を広げることは悪いことではなく、区政に活かして区民に還元していきたい。

*1:平成19年の愛知県大府市認知症の男性が電車にはねられた際、JRが振替輸送代を賠償請求した裁判。H28に最高裁判決で家族に賠償責任はないとした