渡辺みちたか(自民党・新宿区議会議員)official blog

新宿のミッチー。新宿区議会議員(自民党)。1985年12月生まれ。「渡辺ミッチー」こと渡辺美智雄・元副総理の孫。慶応義塾高等学校・慶応義塾大学・同大学院卒業。中小企業勤務、国会議員秘書を経て新宿区議会議員(2期)。会派は自民党区議団。

除染土を汚染土と呼ばわる人たち

 先日、環境省からレク(=説明)を受けた。区内にある新宿御苑に除染した土を福島県から運んできて花壇にする実証実験についてだ。この事業は少し話を聞けばまったく安全で、ビビる必要は1ミリもない。しかし、賛否はもはや党派性をもった戦いになってしまっていて、「汚染土を新宿区に持ってくるな!」、「危険性が~~」、「放射能が~~」とたった6立米のわずかな土を、左派の大きな煽りネタに使われてしまっている。

 そもそも除染した土とは、原発事故時に放射性物質が広範囲に飛散し、いうなればホコリのように薄く広く積もり、このホコリを地面の表層数センチの土ごと削り取って(=除染して)集めたものだ。福島以外では岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県計57市町村でこうした土がある。

 福島県内の除染土はいま、福島第一原発近くの土地に集めて「中間貯蔵」しているが、最終的には法律で福島県外に運び出すことが決まっている*1。この中間貯蔵のための土地の面積は16㎢で、新宿区が18.2㎢なのでさほど変わらない。そりゃ福島県全域の土を数センチ削り取って、集めたら膨大な量になるだろう。そこでは今、見渡す限りの土地が、すべて土の保管に使われている。そして、この新宿区と同じくらいの土地には、もともとは住んでいる人達がいて、いまも帰れず故郷を思っている。だからこの膨大な量の土を、安全性が確認できた段階で、道路などに活用できる方法で全国で使おう、故郷を奪われてしまった人たちをみんなで分担して助け合おう、というのが法律の趣旨だ。固めているものを散らして解決するという意味では、安全性が確認できた処理水を海に放出して薄めよう、と変わらない。

 さて、そんな背景のある除染土だが、先日のレクで、中間貯蔵施設に除染土を運び込む過程で、土の中から木の根っこや、ゴミなどを取り除く作業があることを知った。そしていまなお福島県内には帰宅困難区域があり、この区域内では除染が終了していないことから、この作業は今後も続くという。新宿ではたった6立米の土を持ってくることを危険だと煽る人がいるが、ここでは見渡す限り16㎢の除染土に囲まれて作業を行っている。

 世の中には除染した土を「汚染土」と呼ぶ人がいて、残念ながら新宿区議会内にもいる。私はいままでこの言葉をスルーしていたが、冷静になって、今なお除染に携わる人がいることを考えれば、この方々を貶め、差別につながる発言ではないかと思う。

 今夏、国連のビジネスと人権作業部会が調査のため訪日し、調査終了後に声明を発表した。そのなかで福島原発での作業員の方の労務・人権問題にも触れている。こうした指摘もある中で、本来、人権に関心の高いはずの左派の議員が、軽々に「汚染土」とレッテルをはって人権を侵害していいのだろうか。今後は「汚染土」という言葉については厳しい態度で臨みたい。

 

(参考)国連ビジネスと人権作業部会 調査終了ステートメント
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/issues/development/wg/statement/20230804-eom-japan-wg-development-japanese.pdf

*1:なお、福島県以外の県では中間貯蔵施設がなく、最終処分も決まっていないために、約3万か所に分散して保管されている。というと格好がつくが、実際はシートにくるまれて置いてあるという方が近い。